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こんばんは。
拍手、本当にありがとうございます!!
とても嬉しいです。

本日、百合小説の絶版分のものは全て「小説家になろう」にアップ終了しました。
この機会にどうぞ、ご覧くださいませ!

百合姉妹小説の『さくら変奏曲』
(タイトルクリックで該当ページにジャンプします。以下同じです。)

職人街の百合シリーズのスピンオフ『清明節の日に』

そして、下記似作品は、当ブログでも見る事が出来ますが、小説家になろうにもアップしました。

『小さな恋のメロディ』


『紗枝と八重』


以上、よろしくお願い致します!
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いつも御世話になっている八色先生の『きものなでしこ』二次創作です。
以前pixiv等でアップしておりましたが、これを機にブログにアップしておきます。

百合百合日本文化系日常系漫画『きものなでしこ』オススメです!


よろしくお願い致します!



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「あなたのことを想っています」



 紗綾ちゃんのことを考えていたら、私は彼女について全然知らないことばかりだということに気づいた。
 紗綾ちゃんの好みは分かってるから、着物の本を借りた。でも、それだけでいいのかな。
 本を抱えて、図書館を出る時、ふと、ある本が目に付いた。国際科もあるから、語学の本も多いうちの学校。
 棚には、いっぱい色んな言語の本があるのに、それしか見えなかった。
『フランス語の初歩』。
 たったそれだけの、簡素なタイトル。
 手にとって眺めると、色々と英語と違って戸惑う。正直、よく分からない。
 でも、紗綾ちゃんはフランス人だという事は知ってる。
 本を読み始めると、最初にフランス人がいかに自分の言語に誇りをもっているかということが、述べられていた。
 それを読んで私は、彼女に歩み寄るためには、きっとフランス語も必要だと感じた。
 もう一回、本を追加で借りるために戻った。
 二回も受け付けてもらうのは、ちょっと気恥ずかしい。
 でも、そんなことより、私は紗綾ちゃんのこと、もっと理解したいって強く思った。
 家に帰って読み進めても、自分ひとりだとなかなか理解できない。難しい。まずアルフェべット(アルフェべと発音するらしい)の読み方が、英語と違う。そして、アクサン記号があったり、文法がややこしかったりして、大変だと思った。
 紗綾ちゃんのことが分かりたくて、ただ、気持を伝えたいだけなのにって途中でちょっと泣きそうになった。
 諦めて、明日青海先生にフランス語の先生を紹介して貰おうって、思った。
 鏡に映る自分の顔を見て、真っ黒な髪以外あんまり魅力がないように思って、ちょっとへこんだ。
 見た目だけだったら、もっと可愛い子だって、いるだろうに、とちょっと思って、またへこんだ。

 朝のホームルームの前に青海先生に話したら、珍しく頼りになった。「教師らしいでしょ!」なんて、自慢げに国際科の先生を紹介してくれた。
 その先生はフランス人で、ちょっと発音にクセがあるものの日本語ペラペラだった。
 にこにこと話を聞いてくれて、毎日放課後にレッスン(因みにleçonと書く。ルソンって感じに読む)してくれることになった。
 放課後、いつもより送れて旧講堂にいくと、遅く来た私を心配そうに見つめる紗綾ちゃんがいた。雀ちゃんやリカちゃんはあんまり気にしていないみたいだった。
 理由を聞かれたので、適当にごまかしたら、紗綾ちゃんは変な顔をした。
 しばらく、遅くなるとみんなに告げれば、了解して貰えた。
 紗綾ちゃんは嬉しそうに、今日もてまりさんと着物の会話ができたと、話していた。
 もやもや、する。
 紗綾ちゃんが楽しいのは嬉しいはずなのに、この気持は、なんだろう。
 次の日、そのことを先生に話したら、にっこりと微笑まれた。
 どことなく、色素の薄い肌と金色の髪を持つ先生は、紗綾ちゃんと似ていて、ちょっとだけ、どきどきする。もう大人の女性の先生を見ながら、紗綾ちゃんも大人になったら、こんな感じに色っぽくなるのだろうか、と、ふと思った。
「わたしは、彼女のこと、どう思っているのだろう?」
 ふと、口について、それを聞いた先生が、意味ありげに笑った。「答えは自分で見つけなさい」と言わ れたけれど、そのときは何にも言えなかった。
 レッスンは順調だった。ほんのちょっとした気持なら、話せるようになった。
 帰宅して、暫くした時、お母さんに促されたので、お風呂に入った。
 つらつら考えていたら湯船の中で私は発見した。
 私は彼女のこと、好きなんじゃないか、そう答えが出た。
 そう思ったら、紗綾ちゃんに言いたいことがもっと増えて、眠りに入るまで、ずっと、色々なことを考えた。

 次の日の朝早く、走って学校に行った。先生にそのことを伝えたら、相変わらずニコニコと嬉しそうに聞いてくれた。
 そして、ほんのちょっとだけ、背中を押してくれた。
 目的があると、授業がいつもより長く感じる。
 放課後になるまでが長くて、少し、焦れる。
 チャイムが鳴った。ホームルームが終われば、放課後だ。
 意外なことに青海先生の話は短かった。ラッキーだなって思った。
 そして、旧講堂へ。
 どきどきしながら、何度も言いたいことをおさらいする。
 あれだけ、先生と練習したんだ、きっと大丈夫。
 ちらっと廊下の窓に映る自分を見て、一緒に決意。
 扉を開ければ、そこに紗綾ちゃんがいた。
 見渡して、彼女しか、いないことも確認した。
「かの子?」
 紗綾ちゃんが私の名前を呼ぶ。
 私は、急に、恥ずかしくなって、彼女の顔が見れなくなった。
「……」
 黙っている私に再度、紗綾ちゃんが名前を呼んだ。
「かの子、どうしたの?」
「……あ、あ、ああのね!」
 ちょっと、勢いがつきすぎちゃった。というか、上手く喋れない!
 あんなに練習したのに!
 頭の中でぐるぐると、自分の考えが回っている。
「あ、あの~。わたし、あの。あのっ!」
「かの子、大丈夫? 顔が赤いわ」
 と言いながら、紗綾ちゃんが顔を近づけて来た。
「熱でもあるの?」
 言葉と共に、続けて額に手が当てられた。
 その瞬間、びくっと反応してしまう。
 ほっぺが熱い。
 自分でも、顔が、ひどく熱い気がする。
「ちょっと熱いわね」
 ひとりごちるように紗綾ちゃんが呟く。
 私は顔を上げることが出来なかった。
 すると、紗綾ちゃんに手を握られた。
「今日は帰りましょ! 体調悪いみたいだし」
 意を決して私は顔を上げた。
「さ、紗綾ちゃん、聞いて、私、勉強したの!」
「何を?」
 きょとんとする紗綾ちゃん。
「着物とか、紗綾ちゃんともっとお話したくて!」
 紗綾ちゃんの顔が、ぱああって輝いた。
「嬉しい!」
 と紗綾ちゃんは短く叫んだ。
「それから、紗綾ちゃん。あのねっ!」
 私は夢中で紗綾ちゃんの手を握り返して、彼女の目を見つめて言った。
 あれだけ練習したのに、先生にはあんなに色んな事が話せたのに、今は、この言葉しか思い出せなかった。
「Je pense à toi...」
 どきどきしながら、返事を待つ。
 いつもあれだけ好きって言ってくれるもの、きっと、大丈夫。そうやって自分を落ち着かせていたら、
「……ごめんなさい」
 困惑した顔で、そう言われた。
 自分の耳を疑った。
 ショックだった。
「あの、ね……」
 言いにくそうに紗綾ちゃんが何かを続けようとしたけど、もう私は聞くことができなくて、一刻も早くこの場を立ち去りたくて、彼女の言葉を聞かずに走って帰った。
 泣きながら走っていたから、途中でリカちゃんや雀ちゃんにすれ違っても、無視して帰った。



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 泣きながら走り去ったかの子を見て、私は、呆然とした。
 何て、言われたんだろう?
 多分、フランス語だと思う。音の感じでそれだけは直感した。けれど、肝心な内容が判らなかった。
 こんなことなら、お父様やお母様やおばあさまに習っておけばよかった! なんて、今後悔しても遅い。
 ああ、どうしよう。
 フランス人なのに、フランス語が喋れないなんて知られたら、っていつもビクビクしてたのに。
 それも、よりにもよって一番好きな人に言わなきゃならないなんて!
 小さい頃から、みんなの反応は同じだと知っている。
 話せないの、って言った時の、みんなのがっかりする顔。
 あんな顔、見たくないのに。
 きっと、かの子にもあんな顔、させちゃう。
 でも、そんなことより、かの子を追いかけなきゃ!!
 かの子、待っててね!
 私は走り出した。




 Est-ce que c'est fin heureuse?



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補足説明。
Je pense à toi... =あなたのことを想っています。ちゃんとチュトワイエなので、親密です。

こんばんは!

絶版中の百合小説、
『月船』
「小説家になろう」にて公開中です!
(タイトルクリックで該当ページへ飛べます。&URLは下記です)
URL http://ncode.syosetu.com/n3999bs/

宜しくお願い致します!

こんばんは。
絶版中の百合小説、『散華25』公開しました!
(タイトルで該当ページにジャンプできます)
URL http://ncode.syosetu.com/n3882bs/

これを機に絶版分の百合小説を「小説家になろう」様でアップ予定ですので、
今後とも、どうぞ宜しくお願い致します!

こんにちは!
いつも拍手ありがとうございます!!

百合小説『The inappropriate affect』を「小説家になろう」に投稿しました。
(タイトルで該当ページにジャンプできます)
URLは下記です。
http://ncode.syosetu.com/n3797bs/

この作品はSM百合小説です。
以前頒布していたのですが、絶版になっていたものなので、この際に、是非ご覧くださいませ。

■女子高生たちの放課後の遊戯。首輪をきっかけに始まる二人の少女のお話です。

今後も同じような企画を考えております。

よろしくお願い致します!